Never Shine

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ヒロキは、ふと自分の部屋に戻るとリオナが1人で泣いていた。 「なにしてんの?」 「だって…ライオンさんが可哀想で…」 よく見るとリオナの前には自分のステレオが置かれていた。 ステレオからはヒロキの好きなバンドの音楽が流れている。 「あぁ、それ“ダンデライオン”って曲なんだ」 「そうなの!?」 「和訳すると『タンポポ』って意味なんだよ。歌詞の中にも出てきただろ?」 「へぇ~、ハンちゃん物知りだね」 リオナに誉められた事に気を良くすると 「その歌、沁みるだろ?」 ヒロキはニヤニヤしながら言った。 「なんで?」 「ライオンがリオナと重なるだろ?」 「私はみんなに嫌われてないもん!」 「嫌われてるよ。あっ!リオってライオンの事だろ?まさにリオナの事じゃん」 「なんでそんなこと言うの!?」 リオナは顔を抑えて泣き出した。 「おい、何やってんだ?」 ユウタが部屋を覗くと 「うわっ!リオナ泣いてんじゃん」 「リオ、どうしたの!?」 レオカがリオナの肩を抱いて聞いた。 「ハンちゃんが…私がみんなに嫌われてるって…」 「そんなこと言ったの?」 レオカがヒロキの方を向いて聞くと 「いや、冗談だって」 ヒロキは目を泳がせながら言った。 「冗談でも言って良いことと悪いことぐらいあるだろ?」 「なに?」 「どうしたの?」 「ハンちゃんに酷い事言われたって」 「ハンちゃん謝りなよ!」 みんな口々に言うと、ヒロキはいたたまれなく 「ごめん」 と頭を下げた。 「そんなので謝ったつもり?」 レオカが言うと 「謝るならキスしろよ!」 コウスケが言った。 「キッス!キッス!キッス!」 コウスケが先頭に立って煽ると、みんなで煽り始め、リオナは目を閉じて待っていた。 リオナを見ながらヒロキは顔が徐々に熱く火照って来た。 仕方なく顔を近づけようとすると 「ハンちゃん!ハンちゃん!」 と名前をコールされた。 「ハンちゃん!」 「んはぁ!?」 「あっ、起きた起きたっ」 モモコとアンナがヒロキの顔を覗き込んでいた。 「リオちゃんたちが『書き初めしよう』って」 「えっ?」 ふと体の方を見ると、寝袋の上に大量の布団が掛けられていた。 昨夜のゲームで最下位になったから、自宅に関わらず寝袋で寝たのだ。 どうやら、コタツで寝たユウタとコウスケがイタズラで自分たちの使っていた布団を掛けた様だ。 顔が真っ赤になるほど熱かったが、夢だった事にホッとすると、何だか怒る気にならなかった。
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