Never Shine

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アンナたちが布団をどかして、ヒロキは起き上がるとみんなのいる部屋に行った。 「あ~っ!ハンちゃん」 「おはよーっ!」 「うん…おはよ」 夢なのにリオナの顔を見るのは何だか気まずかった。 「ジャーン」 「見て見て!」 リオナとレオカは自分の書いた書き初めを広げた。 「眠れる獅子」 「蒲公英」 「ライオン!タンポポ!」 ヒロキは文字を見た瞬間、腰を抜かしてしまった。 「あれ?どうした?」 「なんでその文字を?」 ヒロキは震える手で指差した。 「獅子は…まぁ、ライオンなんだけどね。私たちの名前の“リオ”も“レオ”もライオンの事なんだって。だから、そのライオンも『目を覚まして自分らしく動くぞ』って」 「蒲公英は、綺麗だけどどこにでも咲く強さがある花だからね。私もそうなりたいって」 「…」 夢で見た言葉が現実に浮かび上がってきたようで、背中がゾッとしながら見つめた。 「どっちが上手い?」 「私でしょ?」 「わざわざ漢字で書かなくても…カタカナで良いじゃん」 「『眠れる』の意味がわかんないけど。獅子だけで良いじゃん」 にらみ会うリオナとレオカをヒロキはボーッと眺めると 「もしも~し」 2人はヒロキの目の前で手を振った。 ヒロキは夢と何か繋がりがあるかと 「ねぇ、リオナ。タンポポを英語で何て言うか知ってる?」 と聞くとリオナはキョトンとして 「dandelionでしょ?」 と答えた。 「知ってるの?」 「モチロン」 「ちなみに語源は“dande”が『牙』で“lion”が『ライオン』。タンポポの花弁がライオンの牙みたいに尖ってるからなんだよ」 レオカが言うと 「そうなんだ!」 ヒロキは目を丸くした。 「英単語は語源を調べると覚えやすいよ」 「で、それがどうかした?」 リオナとレオカが顔を覗き込ませると 「…なんでもない」 ヒロキは首を振った。 「出来たっ」 ユウタは書き初めを広げると 「…ユウタ、かなり癖字だね」 アリサが笑いながら言った。 「これは芸術なんだよっ!」 「あ、コウスケくん上手いね」 「まぁね」 「俺をないがしろにすんなよ」 不意にリオナが 「ねぇ、お雑煮食べようよ」 と言うと 「雑煮!?」 「俺が作ったんだ」 ユウタが台所を指差した。 コンロには醤油ダシの良い匂いと、餅がグツグツ煮られていた。
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