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「…すまないな、ゲーチス…」
「いえ…」
「…ところで、その小箱を渡してくれないか…?」
Yがそう言うと、ゲーチスはテーブルの上に置いた小箱を持ち上げ、それをYに手渡すと、やがて申し訳なさそうに言った。
「Y様、申し訳ありません…」
「…どうして謝るんだ…?」
「実は、その中にはハート型のチョコが入っていたんですが、私はそれを割ってその右半分を食べてしまいました…
ですが、そうしたのはY様のお体に害がないものかどうかを確認するためでして…
リリスがチョコに毒を入れるなどそのような事はないと思いますが、一応念のために毒見をさせて頂きました。」
「…ふむ、そうか…
ならば、謝る必要はなかろう…
お前は私の体を考慮してそうしてくれたのだ、だからむしろ私はお前に感謝するぞ…」
「そのような…」
「…それに、バレンタインチョコなど今まで一度ももらった事がなかった私にしてみれば、たとえ半分でもありがたく思うよ…」
「Y様……」
ゲーチスがそう言って申し訳なさそうな表情で俯いていると、それを見かねたYが言った。
「…ゲーチス、そのような顔をするな…
お前が気に病む事ではない…」
「Y様…
しかし…」
「…私が病を患ったのはお前のせいではない…
これは私に課せられた宿命なのだ…
だから、気にするな…」
Yは優しくゲーチスにそう言うと、その小箱を開け、その中に入っていたハート型の左半分のチョコを見ると、嬉しそうに目を細めた…
そして、Yは被っていた頭巾を取ると、目元以外、頭部からほぼ顔全体にかけて包帯が巻かれており顔は見えないようになっていたが、包帯の間から覗く薄緑色の短髪は、病がなければ彼は爽やかな好青年だったかもしれないという事を表しているようだった…
そして、Yは口元が少し見えるぐらいまで包帯を取ると、右手でそのチョコを持ち上げ、そのまま口元に持っていくとそれをパクリと食べた…
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