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「この辺に、野良犬なんか、いますか、温かいおしぼりで顔でも拭いたら、落ち着きますよ」と、五十近い店主はカウンターへ座った、巻野竜太(まきのりゅうた)へおしぼりを渡した。
竜太は息を整えるため、薄茶色いジャンパーのファスナーを下ろした。
はだけた中に、赤と茶色いチェックのセーターを着込んでいた。
「野良犬が、煙草を吸っていましたよ」竜太は渡された、おしぼりを広げながら、息を切らせた、はらいせを冗談口で吐き捨てた。
「最近は、犬も煙草を吸うのですね」と、店主は含み笑いを見せた。
竜太は、おしぼりで手を拭きながら「そうですよ、生意気ですよ・・・とりあえず、ビール」声に張りを持たせて、腹立たしい気持をおさえた。
止り木に置く足に力を入れ、腰を浮かせ、深く椅子へ座り直した。
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