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「――何が言いたい」
玉座に座る人物は頬杖をつきながら目前で平伏する男に視線を投げた。
まだ若い王である。
二十歳を少し越えた辺りであろうか。
そしてここでは、その年若い王の怒りを恐れ、誰も物音一つ立てまいとしていた。
広い謁見の間に広がるのは張り詰めた静寂のみである。
「は・・・でっですので、今年は天候にも恵まれず例年よりも収穫量が低くなっております。・・・故に、どうか陛下の寛大なるお心で税の一時引き下げをお願い致したく・・・・・」
「成程・・・では、その引き下げた分をお前が補うという事だな」
「なっ!!いえ、それは・・・」
「ならばこの話は終わりだ、下がれ」
王はそう言うと気だるげに手を振り、話の終わりを告げた。
「お待ちください、陛下!!」
「下がれと言ったのが聞こえなかったのか。それともその首と胴、別々にこの部屋から運び出さねば分からんか」
「ひっ!!」
そう王に睨まれ、使者はそれ以上言葉を続ける事が出来なかった。
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