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「アーガスト卿」
男は静かに窓辺に立つ男に声を掛けた。
まだ若い男だった。
声からして二十代後半といった所だろうか。
そして、その声に振り向いた男もまた若い男だった。
三十代半ばに差し掛かる年齢だったが、月明かりに照らされたその顔は声を掛けた男とそう変わらない年に見えた。
突然自らの執務室に現れた男に不審を抱く事もなく、男は答えた。
「分かっています。時が来た・・・という事ですね」
「・・・後悔なさっておいでですか、あの、約束を」
「いえ、後悔はしていません。ただ・・・」
「ただ?」
男は再び窓に目をやり、蒼く輝く月を見ながら言葉を続けた。
「ただ、悲しく思います」
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