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名前を呼ばれた気がした。
懐かしい声。決して忘れることのない、大切な友達の声。
そうだ、今日はフェイトちゃんと再会する日。待ちに待った記念すべき日。
「フェイトちゃん!」
勢いよく振り返る。その僅かな瞬間さえ今は惜しいほど私の気持ちは高ぶっていた。
その先にいるあの子へ、ぶつかりあって、わかりあえて、友達になったあの子に私はとびっきりの笑顔でそれに応えた。
「なのは!」
あの子が駆け出す。わたしも駆け出す。
風に流れる彼女のおさげ。髪を結い纏めている淡い桜色のリボンはあの日渡したわたしの想い。
離れ離れになっても心はいつだって一緒と交わした約束の証。わたしの黒いリボン、あの子の想いも嬉しそうに風に揺れる。
どんどん距離が近づいていく。50メートルは30メートル、30メートルは10メートルに。加速していく 景色の中であの子の姿がどんどん大きく鮮明になる。
やっと、やっとこの日が来た。この日が来たんだ。
もう一度、わたしは名前を呼ぶ。大切な、大好きな友達の名前を。
「フェイトちゃーん!!」
弾んだ息を抑えつつ、弾んだ鼓動はそのままで、わたしはフェイトちゃんの体を抱きしめた。
触れられない時間は短いようでやっぱり長かったけどこうやってフェイトちゃんを体全体で感じれば不思議なくらい綺麗になくなってしまう。アルバムをすごい速さでめくるようにわたしは、わたしとフェイトちゃんの思い出を懐かしんだ。
「な、なのは……痛い」
「あっ、ごめんね。つい力入っちゃって」
いけない。はしゃぎすぎて手加減を忘れてしまった。
「気持ちは分かるけど……少し落ち着こう」
「う、うん」
「……もう、なのははほんっと子供なんだから」
フェイトちゃんが呆れていた。でも何かおかしい気がするのは気のせいなのかな。
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