別れのとき

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私達がお互いを深く知りあうためには、時間も、余裕も足りなかった。 私と彼は、進むべき道がそもそも違っていた。 興味のある分野もちがった。 春になれば、彼は東北へ向かう。頭のよく切れる人だから、多分合格するだろう。 彼の身を案じるような事を言うと、東北は危なくはないと言う。 あの場所に、僕の求めているものがあるから行くのだ、と。 この冬が過ぎたら、すぐそこまでやってきている春が来たら、私達はもう二度と会うことはないだろう。 お互いが、別々の場所へ放たれる。 自分の足で駆けることのできない、時間は待ってくれない。 どこまでも続く自動のレールが、行きたくなくても私を次へ次へと押し進めていく。 それはみんな同じ速さで進むはずなのに、彼の姿はいつも私のすこし先を行っていた。 行かないで、置いてかないで。 私は、来年もここにいるから。 だから、また帰って来て。私に会いに来てよ。 そうやって、何度願ったことか、頭の中で何度繰り返し貴方に言ったことか。
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