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「遊園地に行かないか、はつか?」
「いや」
朝の通学途中、僕の誘いをはつかは歯切れ良く断った。
はつかはいつも無表情で何を考えているのか分からないヤツなのだが、気付くといつもそばにいる女の子だ。
特に告白されるわけでもないので、当然付き合ってもいない。
学校では人気があるらしく、時には僕の目の前でラブレターを差し出された事もあるはつかは、望めばいくらでもいい男と付き合えると思う。
だが、辛い時、悲しいとき、嬉しい時、この一年、いつも必ず、なぜか僕なんかの横にいるのだ。
僕は今、その真意を確かめるべく、勇気を出して遊びに誘ってみたのだった。
が。
「即答かよ!」
「あら、不満かしら? 答えは早いほうがいいでしょう?」
「いや、そりゃいい返事ならそうだろうけど、悪い返事なら心の準備とかいるだろ?」
「それはリョウ、あなたの準備不足のせいだわ。物事を行う時は、常にあらゆる事態を想定して、心構えをしておくのが賢人というものよ」
「僕は賢人じゃないし」
「そうね。成績は中の中。平々凡々としたルックス。当たり障りの無い会話。確かにリョウには、賢人と呼べる要素が、何一つないのかも知れないわね」
「言いたい放題だな、はつか!」
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