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「2502号室にお泊まりの沢本様にお会いしたいのですが」
「アポイントメントはお取りでしょうか?」
「いえ」
「申し訳ありません、アポイントメントのない方のご訪問はお受け出来かねます」
「では待たせていただけますか?ご本人が出ていらっしゃるまで」
「お名前を頂戴しましたらお伝え致しますが」
「鳴海と申します」
「ナルミ様でございますね、少々お待ちください」
月末まであと一週間
昨日涙が止まらないまま、家に帰って
『どうぞまたいらしてくださいませ』
懇願するような執事さんに曖昧に微笑んで、頭を下げて
何度手紙を読んでもわからないことだらけで
会いに行こう、と意気込んで来た
会える
もうすぐ
言いたいことが山程ある
「お待たせ致しました、右手のエレベーターで25階へどうぞ」
エレベーターが上昇していくにつれて緊張感が増す
逃げないで
ちゃんと受け止めるから
お願い
負けないで
一緒に闘うから
毛足の長いカーペットの上、スイートルームの25階に足を踏み出す
”2502“
どうしよう
涙が出そう
ねぇ蘭
いい弟を持って幸せ
私の選択は間違ってないよね?
涙を堪えてドアベルを押した
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