空気

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私は寒いのが苦手だ、 私は一人も苦手だ、 私はその癖他人と話すのが面倒だと良く思う、 年を追うごとに其れはひどくなる、 多分私にとって、 話すより、居ることの方が 重要なんだろう、 パソコンを叩きながら、毛玉の付いたひざ掛けをもたげる。 スカートはだから嫌いだ。 座って居るとどんどんめくれてくるし、寒い。 制服は楽で良いかとも思ったんだけどなぁー・・ ナツキは26歳(間もなく27歳)OL。 本人曰く、結婚式のために髪は伸ばしているそうだか、あまり整っている様子ではない。 邪魔なので結ぶが、すぐに癖毛が踊っている。 休憩時間は初めの頃は隣の先輩と話していたが、話が会わないのか、彼女が興味がなかったのか、 其れも直ぐにやめてしまった。 今は、京極夏彦の小説を読みながらせんべいをくわえているか、 随分薄くなった、何度目かのティーパックの玄米茶をすすりながら、カタカタとネットサーフィンをしているかのどちらかだ。 ナツキは幼稚園で自殺を覚えて、 小学生で祖父と祖母の真夜中のセックスに悩まされた。 中学生で気付くと父が再婚し、 高校生を卒業する頃に、信頼していた先輩に車で無理やり犯された。 卒業後はレズビアンに目覚 、 夜の街を徘徊し、女性の溜まり場で朝までお酒を飲んで、女性に甘えた。 しかし彼女は酔わなかった。 随分酒につよかったし、タバコもキツイ海外のモノしか吸わなかった。 耳にはピアスが15、6個空いていた。 まぁ、色々だ。 それが彼女を今の大人に育てた人生だ。 だからかもしれないが、 彼女は今何もない淡々とした毎日を、少し気に入っている。 空気の様に人に紛れて、話す訳でもなく、話しかけられるわけでもなく、冷やかされる事もなく。 そんな毎日が以外と嫌いでないそうだ。
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