バレンタイン小説 2012

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列に並ぶと、二時間待ちだと係員が告げてきた。 「結構かかるみたいですね、どうしましょう?」 どことなく残念そうなエリーの言葉にセレは微笑した。 きっと乗りたいのが本心なのだろう。 「折角ですし、待ちましょうか。」 エリーはその言葉に顔を輝かせた。 「はい!」 しばらく待つと、ふと甘い香りが漂ってきた。 横を通り過ぎる人が、おいしそうなクリームの入ったワッフルを両手に持って歩いているのが見えた。 同じくそれに目をとめたセレが、エリーの羨ましげな表情に視線を転じて微笑む。 「美味しそうでしたね。近くで売っていたら買ってきます。少しの間並んでいていただけますか?」 美味しそうだなぁと見つめていたエリーは、その言葉に慌てた。 もしかして羨ましがっていたのに気付かれたのだろうか。 「え、いいんですか?」 「ええ、私も丁度小腹が空いていましたから。」 そう言って店を探しにいったセレの後姿を見送りながら、エリーはほぅ、と溜息をついた。 細かい気配りをしてくれるセレにあらためて想いを強くする。
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