バレンタイン小説 2012

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捨て台詞を吐きながら去っていった男達を尻目に、セレが心配そうにエリーを見つめる。 「お待たせして申し訳ありません。何かあの男性にされませんでしたか?」 「大丈夫です、丁度セレさんが来てくれたので!」 エリーの言葉にセレがほっとして笑う。 「そうですか、良かった。あぁ、これ買って来ましたから、どうぞ。」 買ってきてくれたワッフルを受け取って食べると、ふんわり甘い味が口の中に広がった。 「美味しいですね。」 「ええ、そうですね。喜んで頂けたようで何よりです。」 顔を見合わせて笑いながらワッフルを食べる。 些細な会話が無性に嬉しかった。 並んでいた列がだんだんと短くなり、順番がまわってきた。 座席に座り安全バーに掴まる。 ゆっくりと動きだしたコースターに身を預け下を見下ろすと、遊園地の全景が見えてきた。 「景色がすごいですよセレさん!」 エリーのはしゃいだ声にセレも景色を眺める。 「高いですね~。」 のんびりと会話する中、コースターは頂点に到達した。 「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっ!」 エリーが本日三回目の悲鳴をあげる。 臓器が浮き上がるような独特の感覚にセレはぎょっとした。 「うわ何か変な感覚っ…し、舌噛みますねこれ。」 喋ろうとして舌を噛みかけたセレは慌てて口を引き結んだ。
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