バレンタイン小説 2012

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「あぁおかえりなさいエリーさん。もうすぐ朝食ですよ。」 エプロンを身につけ朝食の用意をしていたセレが、こちらを振り向いて笑顔を浮かべる。 「じゃあ、運ぶの手伝いますっ!」 なんとか株をあげようと進言して、断られる前に盛り付けの終わった皿を運び始める。 少しでも間を空ければ『私がやるからいいですよ』と言われてしまうに決まっているから。 「いえ、大丈夫ですから・・じゃあお願いします。」 断ろうとしたセレも、既に運んでいるエリーを見て苦笑する。 「ではエリーさん、ご飯よそっていただけますか。」 「はい!」 いそいそとご飯をよそるエリーにセレが微笑しておかずの乗った大皿を運ぶ。 ご飯をよそり終えたエリーは、それを見て慌てて大皿に手を伸ばした。 「あ、セレさん、私が運びますから!」 しかし、セレはそれを遮るように空いた右手を前に突き出した。 「いえ、か弱い女性に重い物を運ばせる訳にはいきませんよ。」 「・・誰がか弱いって?」 隊では武術を得意とするエリーと「か弱い」という言葉の間に違和感を覚えてダイニングに入ってきたあずまがぼそっと言う。 「おはようございます。あずま様、失礼ですよ?」 たしなめるように言うセレにあずまは肩を竦めただけで席についた。 か弱い発言をされたエリーは何だか面映い気持ちでご飯をよそったお椀を運ぶ。 ご飯をよそるよう頼まれたのも、負担の少なく楽な仕事を回してくれたのだろうかと期待してしまう。 「あぁ、そうだエリーさん。」 セレが思い出したようにエリーを振り返る。 「先日仰っていた遊園地、時間が取れましたから、私でよろしければご一緒させて下さい。」 エリーはその言葉に顔を輝かせた。 「ほ、本当ですか?」 「ええ。」
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