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遊園地のペアチケットを手に入れたのは、商店街でたまたま引いた福引きだった。
なかなか想いを伝える決心がつかずにいたエリーを後押しするかのようなその当たりくじに、エリーはついに意を決してセレに誘いをかけたのだ。
『セレさん、あの、よかったら一緒に遊園地に行ってくれませんか?商店街で福引で当たったんです。じゅ、14日なんですけど・・。』
『私と・・ですか?』
面食らった様子だったセレは、それでも笑顔で仕事の都合がつけばと言ってくれた。
「他の方でなくて私で宜しいのですか?」
どこか申し訳なさそうなセレに、エリーは力いっぱい頷いた。
「はい!あ、あの、他の皆はもう付き合い長いけどセレさんはまだ来て日が浅いですし、親睦を深めたいなと!」
本当は親睦どころか愛を育みたいだとかいう恥ずかしい言葉が脳裏をめぐり、エリーはほんのりと赤くなった。
なにやら必死な様子のエリーにセレは小さく微笑すると頷いた。
「そういうことでしたら、喜んで。しかし、このように美しい方と二人きりとは少し照れますね。」
セレの言葉に顔から火が出そうになったエリーはぎくしゃくとした笑みを浮かべた。
「お世辞言ってもな、何も出ませんよ。」
「お世辞ではありませんから、どうぞお構いなく。」
ふんわり笑うセレにエリーは思わず俯いた。
このままでは遊園地に行くまでに身が持たない。既に心音がやけにうるさくて息苦しい感じがする。
セレさんは誰にでもこうなんだから、落ち着け私!心の中で呟いて息を整える。
そう、誰にでも歯の浮くような台詞をさらりと言ってしまうのだこの人は。
しかも相手を口説くわけでなく普通の褒め言葉として。いちいちどきどきしていたらきりがない。
「そういうわけであずま様、今日一日お暇を頂きますね。」
セレの言葉にセレから前もって暇乞いされていたあずまは頷いた。
「ああ。セレも滅多に休みとらないんだから、楽しんでこい。」
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げた後、セレがエリーを見る。
「エリーさん、何時ごろでましょうか?」
「ええと、朝ごはん食べ終わったら支度して、玄関で待ってます!」
「畏まりました。」
そのまま朝食の支度を再開したセレに、エリーも手伝いを再開したのだった。
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