バレンタイン小説 2012

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たどり着いた遊園地は、人で込み合っていた。 日が日なだけに、カップルが大半を占めている。 仲良く手をつないで歩くカップルを羨ましげに見ていたエリーの前に、手が差し出される。 「人が多いですからはぐれないようにしませんとね。エスコートさせて頂いても?」 エリーは夢見心地でその手を見つめた。これは手を繋いでいいということだろうか。 「う、あ、はい。」 ぎこちなく手を重ねるとセレは微笑んで握り返してくれた。 「何からいきましょうか?」 セレの言葉に慌てて遊園地のパンフレットを取り出す。 「え、えーと、セレさんの希望はありますか?」 自分よりもセレの希望を優先したいと、パンフレットをセレに見えるよう広げる。 「私ですか。そうですね・・」 パンフレットを覗き込まれると、必然的に顔の距離が近くなった。 耳元で聞こえた声にどきりとする。 少し身を屈めパンフレットを眺めていたセレは困ったように笑った。 「実は、遊園地ははじめてなもので・・エリーさんのおすすめを教えていただけますか?」 「あ、はい!…ええと、あの、お化け屋敷とか興味ありますか?」 遊園地でデートといったら王道はお化け屋敷でどきどきして抱きつくことだろう。エリーはおそるおそるセレに尋ねた。 「お化け屋敷、ですか。いいですね、行ってみましょう。」
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