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お化け屋敷はそれなりに混雑していた。
やはりカップルで溢れている順番待ちの列では、女性が甘えるように男性の腕に自分の腕を絡めて相手の肩に頭を預けていた。
その姿に自分を重ね、気恥ずかしい気持ちで俯いていると体調が優れないのかと心配されてしまった。
慌てて否定し、雑談を楽しむ。
しばらく待つと、係員に誘導され中に通された。
中は暗く、おどろおどろしい雰囲気が漂っている。
想像以上の不気味さに恐怖を覚えたエリーは小さく震えた。
それに気付いたセレが、手を握る力を強める。
「大丈夫、行きましょう。」
セレの言葉に小さく頷いて恐る恐る歩を進める。
ふと足音が一つ多いことに気付き後ろを振り向くと・・血まみれになったゾンビが後ろで今にもこちらに襲いかかろうとしているところだった。
「きゃあぁぁあぁぁぁあぁあ!?」
エリーは思わず悲鳴を上げセレに抱きつく・・のではなく、思い切りゾンビの腹に膝蹴りを食らわせた。
「ちょっとエリーさん!?」
セレはぎょっとして慌ててゾンビに頭を下げた。
「あ、あのすみません!」
ゾンビの姿をした従業員はひどく恨みがましい視線を向けてきた。
見た目がゾンビなだけによく恨みがましい表情が似合う、等と呑気なことを思いながらももう一度謝罪をしてから未だ混乱している様子のエリーの手を引いて先に進む。
「ほら、エリーさん。もうゾンビはいませんよ。大丈夫ですか?」
ようやく落ち着いてきたエリーは、今度は違う意味で蒼くなった。
よりによって膝蹴り。抱きつくでもその場にしゃがみ込むでもなく何で膝蹴り。
自分の乙女からかけ離れた行為に泣きたくなる。
「だ、大丈夫です。取り乱してすいません。」
セレはその様子に微笑した。
「もし怖いならば腕に捕まって目を瞑って下さって構いませんよ。出口まで連れていきますから。」
エリーはその言葉に情けないような嬉しいような気分で頷いた。
ぎゅっとセレの腕に両腕で抱きついて顔をうずめるように目を瞑る。
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