1じかんめ「自己紹介」

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「一樹くん、大丈夫?」 「んぅ、だいじょーぶ」 「ふふ…ちゃんと一人でできたね?偉い、偉い」 トイレの個室に一樹くんを連れて行き暫くすれば幾分すっきりした表情の一樹くんが帰ってきた(やっぱり、トイレ行きたかったんだ) 俺が褒めながら頭を撫でてあげると一樹くんはふわりと天使みたいな笑顔を浮かべてはぎゅうっと俺の足に抱き着いてくる そんな姿が可愛くて俺が抱き上げてあげると少し驚いて怯えた様子の一樹くんに少し違和感を覚えていれば誰かに思いきり足を蹴られて 「いたっ!?」と思いがけない衝撃に呻いてそちらを見てみると年中にしては小さい子が俺の足を何度も蹴りながら思いきり睨みつけてくる(え、な、なになになにっ!?) 「あー、もう!亮太くん、あかんって!」 「はなしてやっ、タツせんせー!こいつが!こいつがカズいじめてんねん!」 「ち、違うよ…っ、りょーくん!この人ははな先生だからわるいひとじゃないよ?」 俺が何かわからず唖然としていると大原先生が廊下の向こう側から駆けてきて俺を蹴りつける子を抱き上げて困った顔をして嗜める(亮太、くん?)(…しかも年少の子なのか) 抱き上げられてもまだバタバタともがく亮太くんはどうやら俺が一樹くんに何か悪いことをしたと思ったらしい 誤解を解こうと口を挟む前に俺の腕の中にいる一樹くんが眉を下げながら否定すればわたわたと手を動かしているので近づけてあげると亮太くんの頭を小さな手で撫で始めた それでやっと落ち着いた様子の亮太くんに大原先生も俺もほっと安堵のため息をつき顔を見合わせて苦笑いを浮かべる 「はい、じゃあ亮太くんはすみれ組に戻りましょうねー」 「え、いややー!まだ、カズといっしょにおんのっ!」 「そんなこと言いよったら次の休み時間は教室出禁の刑にすんで?」 「それはもっといややー!」 じたばたと暴れる亮太くんを連れて大原先生はすみれ組の教室へと去って行った(た、台風みたいなひとだな…) 「はな先生、りょーくんのこと悪く思わないでね?」 「ん?大丈夫だよ、一樹くんを助けようとしただけだもんね」 「ふふ、うん!ありがとー」 さっきみたいな笑顔を俺に向けてくれた一樹くんの頭を撫でながら二人で教室に戻る .
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