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「あ、やば…弁当忘れた」
園児たちを翠川先生と園長が迎えに行っている間、俺と大原先生と四谷先生で職員室で作業をしながら話していると四谷先生が動作を止めて呟いた一言
それを聞いて大原先生は卵焼き(お手製)を食べていた手を止めて盛大なため息をつく
「またですかぁー?ほんま、四谷先生は忘れもん多すぎ」
「だって普段自炊とかあんませぇへんし!」
「何自分の生活力のなさ自慢してんすか…あー、嫌やぁ、また俺が作らなあかん」
「別に頼んでへんし!」
「頼まれんでも、園児たちに示しつかんでしょう!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いてください…弁当一つでそんな喧嘩しなくても」
「弁当一つやって!?」
まだここに赴任してきてそんなに経たないがこの二人の痴話喧嘩はいやというほど見せられて、翠川先生はよく天然爆発でミスも多いし俺を除くメンバーで今までやってこれたななんて何度思ったことか
兎に角、この不毛な喧嘩を止めさせようと口を挟んだら、大原先生の矛先が何故かこちらに向いた(え、…うそ)
「あか先生、それはゆうたらあかんよ…タツには特に、話長なるから」
「うっさい!…あんなぁ、はな先生。この園にもな色んな家庭事情を持った園児がおるんやで?裕福な子もおれば、貧乏な子もおる。親が片方しかおらん子もおれば、親が忙しくてじぃちゃんばぁちゃんに面倒見てもろてる子もおる。人の数だけ、家庭がある。自分の家庭が当たり前やない、そういうのを園児に弁当から学んでもらうんや、そういう目的でこの弁当の日はあんの!」
俺を真剣な目で見つめてきた大原先生の口から紡がれた言葉は確かに的を得ていて
ただ、それ以上に何処か悲しそうな大原先生の表情に少しの違和感を覚えながらもその迫力に圧倒されて俺が頷くと満足したように大原先生は笑って
無事、矛先は四谷先生へと戻っていきました(嗚呼、弁当ちゃんと持ってきてよかった)
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