2じかんめ「愛情弁当」

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「おはよう、一樹くん、麗くん、純也くん」 「あ、おはよう…はな先生」 「はな先生…、あのね、麗くんのね?お弁当がね?」 三人に話しかけてみると純也くんはぺこりと頭を下げて挨拶をしてきて、一樹くんが眉を下げたまま心配そうに俺を見つめて何かを伝えようとしてきた ただ一人喋らない麗くんの顔を覗き込んでみれば泣きそうな顔をしていていきなりのことに驚いたけど取りあえず優しく頭を撫でてあげる 「どうしたの?麗くん」 「おべんとー…ないの」 「え?」 「ままが、忙しくて作れなくて…おべんとーないの」 「そっか…」 お弁当で家庭が見える、そしてそれに直に触れることで子供たちもいい学習になる 大原先生が言っていたことは一理あるけれど麗くんみたいな子供がいたら元も子もないじゃないかなんて小さくため息をはいては泣きそうな麗くんを抱き上げて頭を優しく撫でながら取りあえずバスから降りると俺の後ろから麗くんを心配するように他の二人も降りてきて そんな俺たちの姿を見て何かあったと勘付いたらしく翠川先生がこちらに近づいてきて俺の手から麗くんを受け取って俺と同じように泣きそうな理由を一樹くんから聞いていた 「麗くん、大丈夫だよ?麗くんのお弁当、ちゃんと準備するからね?」 「ほんと?みどりせんせ…?」 「うん、給食のおばちゃんが麗くんのお弁当作ってくれるからね」 翠川先生が笑顔で言った言葉に麗くんは幾分か落ち着いた様子で弱々しいながらも笑みを浮かべては翠川先生も安心したのか彼を連れて教室へと入っていく まだ心配そうに麗くんを見つめる一樹くんの頭を撫でてあげるとにこりと俺に笑いかけてくれた 「一樹くんはお弁当持ってきた?」 「うんっ、ママがつくってくれた」 「そっかー、お弁当の時間が楽しみだね」 「一樹、早くいこーぜ」 俺が仲良さげに一樹くんと会話していれば純也くんが俺たちを引き裂くかのように一樹くんの手を握って教室へと入っていく どうやら、亮太くんだけじゃなくて純也くんも一樹くんの護衛らしいな…何かあったんだろうか 「はーなせんせ?何ぼーっとしてんの?」 「あ、いや…少し考え事です」 「ふーん、ならええけどはよせんと濡れんで?」 四谷先生の言葉にふと空を見上げれば空の雲行きが怪しいのに気付いて俺も四谷先生に続いて教室へと入った(今日は雨なんだっけか) .
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