2じかんめ「愛情弁当」

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朝礼が終わって暫くたってから、天気予報が的中して雨が降り始めた 外で遊んでいた園児達を全員屋内へと招き入れては風邪を引かないようにと濡れた身体をバスタオルで綺麗に拭いてあげる 大人しく拭かれる子もいればジタバタと抵抗する子もいて、翠川先生なんか友哉くんに思いきり頭突きされていた(それに本気になって泣きそうになってる)(翠川先生も大人げないけど…) 「はなせんせ、ぼくも拭いて?」 「うわぁ、一樹くん泥だらけだね…何してたの?」 「純也くんと、麗くんとすなのお城つくってたの」 俺がバスタオルを持って立っていると身体中泥まみれの一樹くんが近付いてきて リクエスト通りに丹念に身体を拭いてあげながら話し掛けると一樹くんはふにゃりと笑いかけてきて楽しそうに今まで遊んでいたことを話し始めた 麗くんが砂のお城を作るのがとても上手いこと 純也くんが自分や麗くんのために大変な作業を進んでやってくれること 本当に嬉しそうな表情の一樹くんを見ていたら本当に三人は仲が良いんだななんて思って ここに来てから誰と誰が仲が良いかは徐々に把握してきたけど、俺のなかで一樹くん、純也くん、麗くんの関係は未だに謎が多い 他の子が色んな人と遊んでいるのにこの三人はずっと一緒にいるんだよなぁ… 周りから少し浮いているようにも見えて でも、三人が特別問題児かと言われるとそうでもなく(純也くんは友哉くんとしか喧嘩しないから) 俺がくる前に何かあったのかななんて考えながら手を動かしていると一樹くんはすっかり綺麗になって俺にぺこりと頭を下げてお礼を言う そして、二人を探してパタパタと走り出す姿を見送って次の子へと移る 「ふぃー、お疲れ様です!はな先生っ」 「いえ、翠川先生こそ頭突きされたところもう大丈夫ですか?」 「みっ、見てたんですか?…恥ずかしい限りです」 やっと全員が綺麗になって室内で遊び始めたのを教室の端で見ていると翠川先生が少し赤くなった顎を撫でながら隣に来て話し掛けてきて皆を眺めながら少し二人で話していた そんな時、エプロンを引っ張られて誰かと思えば一樹くんが今にも泣きそうな顔で俺を見つめている 「どうしたの?一樹くん」 「いないのっ…!純也くんも麗くんもっ!」 .
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