2じかんめ「愛情弁当」

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一樹くんが必死に訴えてきた言葉に周りで他の園児たちが騒いでいるのが別の世界であるような錯覚に陥る 脳内に甦るのは、最悪の記憶 心臓が嫌な音をたて、早く動いていてそれに動揺しながらもなるべく落ち着いた風を装う(そうじゃないと)(、きっと一樹くんは泣いてしまう) なるべく優しい表情を浮かべつつしゃがんで一樹くんを真っ正面から見つめて話し掛ける 「一樹くん、どういうこと?」 「トイレもきょーしつも見たのに純也くんも麗くんもいないのっ!ぼくにだまってどっかに行くなんて今までなかったから…」 「翠川先生、大原先生の所に行って聞いてください」 動揺する一樹くんの頭を優しく撫でながら隣で呆然としている翠川先生に鋭い声で指示を出すとハッと我に返って慌てて教室を飛び出した その後ろ姿を一瞥してから俺も一樹くんと一緒になってもう一度教室を探してトイレや音楽室、講堂へと行ってみるけどやっぱり二人は何処にも居なかった 「せんせぇ…、なんで二人いなくなったの?ぼくがわるいことした?」 「一樹くんは何もしてないよ?大丈夫だから、大丈夫…」 遂に泣き出してしまった一樹くんの背中を優しく撫でてあやしながら教室へと戻ってみると翠川先生だけじゃなくて四谷先生の姿もあって二人とも焦りと不安の色を隠しきれないでいる 「翠川先生…それに四谷先生も」 「おん、大変なことになったな…」 「はな先生!どうでしたか?」 「やっぱり建物の中には居ないみたいです…」 「そうですか…でも、よつやんが言うには園内入り口からは誰も出てないんですって」 「どういうことですか…?」 どうやら、四谷先生の話を聞くとこの幼稚園には入り口に防犯カメラが設置してあって園児が出ていかないか不審者が入ってこないか四谷先生がその映像を見ていたらしい そこには誰も出入りした形跡はない しかし、下駄箱を確認したところ二人の靴は無くなっていた 「やから、運動場にもしかしたらおんのかもしれんってことやな…最悪、俺が見逃したってことも考えられるけど」 「そうですか、分かりました」 「えっ…?は、はな先生…っ!?」 二人が外に出たのが確定したなら迷ってる暇はない 俺は一樹くんに笑いかけた後に傘もささずに園内から飛び出した(もう、後悔はしたくないから) .
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