2じかんめ「愛情弁当」

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「紅花先生もあんなクラス任せられて大変でしょう?ぎょーさんえらいことがあったクラスやし」 「え…?」 真也ママの世間話を右から左に受け流しながら聞いていたもののいきなり言われた一言が俺の心に引っ掛かって思わず驚いた表情と共に彼女を見つめる すると、彼女は俺の反応に満足げに笑ってまたベラベラと話し始めた 「ほら、鷺ノ宮さんとこの子?あの子、凄い暗い子で扱いにくいやろうし、あとはほら…友哉くんとよく喧嘩しとる、村崎くんやったっけ?あの子も問題児っぽいし。まぁ、その二人でつるんでるらしいんで同じ穴のムジナっちゅうやつですねぇー」 「ほら、問題児と言えば!うちの真也と同じクラスの海野くんやったっけ?あの子もあの年にしては大人しすぎやし、まぁ…家庭が家庭なんで仕方ないのかもしれないですけどねぇー」 「あの、お言葉ですが俺のクラスの一樹くんも純也くんもそれに真也くんのクラスの麗くんもいい子ですよ」 女性は噂話が好きとはよく言ったものだけどそれが園児たちにも向けられ、そして彼女の話を聞いて真也くんが三人に対して偏見を持ちかねないなんて考えたら何だイライラしてしまった 無理矢理話に割り込んで俺の正直な感想を至極冷たい表情で言い放てばこの人と話していても不快になるだけだと小さくため息をはいては「では、用事があるので失礼します」と一礼しながら言っては呆気にとられている真也ママの横を通り過ぎてまた歩き出した 怒りのような、悲しみのようなよくわからない感情に自然と足が速くなっていくのがわかるそして心のムカムカはなかなか取れそうにもない 園児同士の喧嘩は可愛いものだし、成長するためにも分かり合って仲良くするためにも必要なものだ でも、そこに親が介入してくると話は別だ 子供というのは何よりも自分の親の言うことが真実だと思い、それに従って行動を起こす 親に嫌われることを恐れ、親のためになることをしようとする それが、子供だ 子供の親に対する思いが他の子供に影響を及ぼすことだってありえる、純粋な感情は瞬く間に悪意へと変貌してしまう そして親はそれを自覚していないのがほとんどだ 自分の言葉が子供の世界にどれほど影響するのかなんて知らない だからこそ、たちが悪いんだ .
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