2じかんめ「愛情弁当」

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まだ何となく胸の奥がムカムカとするのを感じながら早足で歩いていると閑静な住宅街へとたどり着いた この辺りに麗くんの家があったはずだ…、確か 俺のおぼろげな記憶を頼りにしてきたから少し自信はないけどそんなことも言ってられないと歩いているとふと小さな公園の前で足を止める この辺りに住んでいる子供たちが遊び場にしているのであろうそこは勿論、雨のせいで誰もいないはず…なのに 雨音に混じって聞こえる、すすり泣くような声 まさか、と思い公園に足を踏み入れて中央にある大きなドーム型のすべり台を覗いてみると案の定、そこには今まで探していた麗くんの姿があった しゃがんで中に入ると麗くんは物音と気配でこちらに気づいたらしく最初は俺と分からずに驚いたらしいが直ぐに気づいて泣きながら俺へと抱き着いてくる 何があったかは分からないが泣いている彼の頭を優しく撫でてあげると少し落ち着いてきたのかだいぶ泣き声が落ち着いてきた 「麗くん…無事でよかった」 「ふぇえ…、せんせぇっごめんなさい!」 「ううん、麗くんが無事ならそれでよかった…でももう絶対に園内から無断で出たらだめだよ?」 「うん、わかった…絶対、まもる」 「ふふ、いい子だね」 優しく頭を撫でながら言い聞かせると麗くんは涙を流しながらも俺の顔をじっと見つめながらこくりと何度も頷く 少し経つと大分落ち着いてきたらしく涙を拭って俺に再度深々と頭を下げて謝ってきた やっぱりしっかりした子だな、なんて感心しながらにこりと笑って「もう大丈夫だから、先生と帰ろう?」と一言言うとまた途端に麗くんの表情が硬くなる 「せんせ、先生!あのね、純也くんがっ…」 「純也くん…?そ、そういえば純也くんと一緒じゃなかったの?」 「あのね、純也くんとねさっきまで一緒だったの!」 「さっきまで…?」 「ここでねっ、ぼくが雨宿りしようって言ったらちょっと待っててってどっかいちゃったの…」 純也くんが行ってしまったのは自分の責任だと感じたのだろう服の裾をぎゅっと握りしめて泣きそうになるのを必死に堪えながら俺に一生懸命自分たちが置かれた状況を説明してくれた麗くんに笑いかけてはその隣に腰掛ける(俺にはちょっと狭いけど…) 「ここで、一緒に純也くん待ってようね?」 「!…うんっ」 .
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