2じかんめ「愛情弁当」

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純也くんの帰りを待ちながら雨が止まないかと外に視線を向けるけれど止みそうな兆しはなくてなんで傘持ってこなかったんだろうと何度目か分からない後悔をしながらため息をついていると麗くんがずぶ濡れの俺に気づいたのか心配そうに見つめながらポケットから取り出したハンカチで俺の顔を拭ってくれる 「ありがとう、麗くん」 「ううん、はな先生がびしょびしょなのぼくのせいなんでしょう?」 「いいんだよ?傘を持ってこなかった俺が悪いんだからさ…でも心配したのは本当。みどり先生たちも心配してるだろうから帰ったらちゃんとごめんなさい言おうね?」 俺の言葉に麗くんはまだ申し訳なさそうに眉を下げながらも何度も頷いて一生懸命に俺の話に耳を傾けてくれている そんな彼を見ながら俺は何で俺がここに来たのかという経緯を差しさわりのない程度に話した、勿論途中で真也くんのお母さんと話した内容は言わなかったけれど 「ねぇ、麗くんと純也くんはなんで幼稚園から勝手に出たの?いけないことだって分かってる、よね?」 「うん…何回も出ちゃだめだっておしえてもらったよ…だから、すごい悪いことしたんだってわかってるの」 「そうだね、じゃあなんで?麗くんと純也くんは先生たちとの約束を破るような子じゃないでしょう?」 「…おべんと、ほしかったの」 「え?」 申し訳なさそうに俺を見つめる麗くんをじっと見つめていると少し黙ったあとに話してくれた理由に俺は少なからず驚いてしまって 弁当なんてそんなくだらない理由でと思ってしまったけれど、子供の世界と大人の世界は尺度が違う、ここで麗くんを頭ごなしに怒っても駄目だろうしなぁ なんて思っていたら麗くんは寒いのか俺の身体にぴたりと自分の身体を寄せてきて(多分俺の身体の方が冷たいだろうけど…)目を閉じて小さく笑った 「おとーさんがいたらこんな感じなのかな?」 「え…?」 「ぼくの家、おとーさんがいないの」 「それは…麗くんとお母さん二人で暮らしてるってこと?」 「うん、でもねおとーさんがいないのがさみしいとは思わないよ?ママがいつもぼくと一緒にいてくれるから」 最近じゃ母子家庭は珍しくはないけど、そう言う麗くんは本当に幸せそうに笑っていてそこに父親がいないことへの負い目も何も感じられなかった .
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