2じかんめ「愛情弁当」

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幼稚園にたどり着いたころには雨はすっかり止んでいて服が乾いてきて肌寒さを感じながら園内に入るとお昼の時間で皆が教室でお弁当を広げているのが目に入る 俺が二人を連れて(二人は恐る恐るという様子で)教室に入ると一瞬教室内は静かになった後に一樹くんと翠川先生が駆け寄ってきた 「麗くん!純也くん!」 「一樹…ただいま」 「ごめんね、一樹くん…」 「…ふたりの馬鹿!ばかばかばか!心配したんだよ?また、ぼくのせいかと」 ぎゅっと二人を抱きしめながら泣き出した一樹くんを見て二人はしゅんとなりながらも宥めるように頭を撫でて三人で抱きしめあっていた そんな三人に口出すのを野暮だと思って何も言わずにいると翠川先生が俺の横に無言で立ってきて何を言われるのかと思えばおもいきり頬を叩かれた(…いた、ってえ?) いきなり響いた乾いた音に園児たちは一人残らずこっちを見ていて俺の代わりに年中の子たちを見ていたのであろう四谷先生もこちらを驚いた様子で見ている 「み、翠川…先生?」 「…勝手に出て行って、園児たちのことほっておくなんて先生としてどうなんですか?麗くんや純也くんのことも大切ですけど他の園児たちのことだって考えないとダメじゃないですか!それに…この辺だったら俺たちの方が詳しいのになんで行っちゃったんですか?はっきり言って、無責任です!」 普段おっとりとしている翠川先生の剣幕と怒った表情に俺は驚いてしまって 叩かれた頬を手で押さえながらただ茫然と彼を見つめていると一気に大声で喋ったからか翠川先生は息を切らしながら俺を睨みつけたまま今度は目から涙を零し始めた(え、え、…え?) 「っ、すいま…せん」 「い…いえ、こちらこそ心配かけてすいません」 「はいはーい!そんなしけた面したらあかんよ?皆揃ったんやから皆で仲良くお弁当食べましょー」 俺と翠川先生の間に漂う新名な雰囲気に気づいたのか四谷先生が俺らの肩を叩きながら言った一言に俺も翠川先生も我に返って顔を引きつらせている園児たちに笑みを向ければ弁当を持ってその園児たちの輪に入る すると皆も笑顔になってきていつも通りの楽しい昼休みになった 麗くんは嬉しそうな顔で純也くんの作った少し歪なおにぎりを頬張っていた .
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