159人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、みどり先生金環日食って知ってる?」
「キンカンニッショク?」
「ふふ、その顔は知らないって顔だね」
暑い夏の日、眩しい日差しに俺が顔をしかめていると同じように隣で空を見上げていた先生が話しかけてきて聞き慣れない言葉にきょとんとした表情を向ける
そんな俺を見て先生はくすりと笑ってホースから勢いよく出ていた水をとめて額に流れる汗を手で拭う
そんな姿に少し見惚れてしまった自分に気づいて慌てて視線をそらして俺も頬に流れる汗を拭って一休みしようと腰掛けると先生も隣に腰掛けてきて
「で、なんなんですか?その…きんかんなんちゃらって」
「金環日食、ね」
「そうそれ!」
「日食の一種で重なったところからはみ出ている光がリングみたいに見えるんだよ」
「へぇー…そういえば今年見れるんですよね?か、かいき…」
「皆既日食ですよね」
「そうそう!園長が皆で観察するって言っててさ!」
なんでもない会話をする中でも俺よりも頭いいことが直ぐに分かって、先生と話すと自然と笑顔になる自分に単純なんだよなと思いつつ風で風鈴が揺れて鳴る音に耳を澄ませる
天体とかよくわかんない俺からすれば日食とか言われてもテンションは上がんなくて、ていうか仕組みすらよくわかってないから子供たちに教えるために今まさにネットとか駆使して一生懸命勉強してるのです
「でもさ、みどり先生はきっと子供たちよりテンション上がってそうだよ、いざ当日になったら」
「え?そうかなー…で、その金環日食はいつ見れるんですか?」
「うーんと…確か3年後、とかじゃなかったかな?」
「じゃあ、それも一緒に見ましょうね!」
『―、――…』
「え?」
まだ金環日食が何か分かってないけど貴方と見たい一心で俺が笑顔で話しかけると何時もみたいにふわりと笑って俺の頭を撫でてくれた
数日後見た皆既日食、皆で見たときに俺は先生が言ってたように思いきりはしゃいでしまって(まぁ、タツ先生もはしゃいでたけどね!)そんな俺の姿を見て先生はクスクスと小さく笑ってた
きっと次、金環日食を見る時も俺が馬鹿みたいにはしゃいであの人は俺を見て笑っていて
そんな些細なことに俺は馬鹿みたいに幸せを感じるんだろうなと思ってた
.
最初のコメントを投稿しよう!