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「翠川先生?」
「ん?」
「もう皆集まってますよ?」
「あ、はいはーい直ぐ行きます!」
職員室に俺が籠っているとはな先生が入ってきてぼーっとしてる俺の顔を覗き込んできて思った以上に近い距離に驚きながらも平静を装ってにこりと笑う
思い出していたやりとりとあの人の顔に少しテンションが下がっている自分の頬を叩いて喝を入れてから外に出ると普段よりも早い時間にも関わらず子供たちが皆はしゃいで元気そうにしてる姿が目に入った
「遅いわ、みどり先生!もう始まってんで!」
「少し欠けてんの!うわぁ、すごいわ」
子どもたちと一緒にタツ先生と四谷先生もすっかりテンションが上がりきっているみたいで俺に話しかけてくる
そんな二人と対照的にはな先生はいつもみたいに落ち着いていて、その姿に嫌でもあの人の姿を重ねてしまいそんなのダメだとふるふると首を横に振ってから折角の日食に集中しようと見上げてみるとそこにはすっかり重なった月と太陽の姿が目に入って
「うわぁー!すげぇ、本当にリングみたい!」
「綺麗ですよね、こんなに綺麗に見えるなんて貴重みたいですし…」
俺がいきなりテンションが上がったのを見て俺の隣にいたはな先生がクスクスと笑ったのが分かってそっちに視線を移したらふわりと笑うはな先生の姿があって(あの人みたいな優しい笑顔)
「知ってますか?告白する人がいるって話」
「え…?」
「恋人と一緒に金環日食を見て結婚指輪に見立てるんですって…ロマンチックですよね」
はな先生が言った言葉に思わず自分の表情が固まるのが分かって(だってそれは)(、あの人が言った言葉)
『金環日食を使って求婚する人がいるんだって…知ってた?みどり先生』
『凄いロマンチックだよね、みどり先生はそういうの好き?』
蘇る笑顔と俺の頭を撫でるあの人の手のひらのあたたかさ、感触…忘れようとしてた記憶が脳内を駆け巡る
「おーい!みどり先生たちもこっちおいでや」
「はな先生、凄いきれーだよ?一緒にみよう?」
「うん、直ぐ行くよ…翠川先生も行きましょう?」
「う…うん!」
慌てて何時もみたいに笑って友哉くんたちのところへと走って皆で空を見上げた
重なる、重ねる
(貴方と一緒に見たかったもの)(、貴方と重なる人)
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