第一章 教師と巫女とA組と

2/3
前へ
/12ページ
次へ
雪積もる晴れやかな受験日から早数ヶ月。 季節は春。 標高が高いだけあって残雪はまだまだあちこちに敷き詰められてはいるが、心地の良い風が吹くようになってきた今日この頃。 気付けば俺はもう非常勤講師ではなく、一クラスを纏める一人の担任となった。 これからは生徒達を纏めながら過ごしていくことになるわけだ。 まあ色々と大変みたいだが、それなりに頑張っていこうとは思っている。 それで今から早速、生まれて初めて教師として朝のショートホームルームに臨もうと、教室の前まで来たわけだ。 わけなんだが、なんだか胸騒ぎがする。 いや、確かに緊張は少しくらいはしているが、何というか……うん、違うんだ。 嫌な予感、というと少しばっかり言い過ぎなところもあるかもしれない。 少なくとも何かありそう、みたいな直感。 そんな感じ。 まあ俺の単なる思い過ごしだろうな。 ベテランならともかく、高々非常勤講師を数年勤めてただけの野郎が何を言ってるんだって話だ。 そんなことを自分に言い聞かせながら、目の前の扉を開け放った。 「あら、遅かったじゃないカイトさん」 それは、扉を開けてから正に刹那的な出来事だった。 この教室から、なんか可笑しな声が聞こえた気がしたんだが。 生徒達が一様に列を成して机の前に座っている中で、予想外のものが目に入った。 多種多様の髪色がある中、特に目立って見える漆黒のもの。 普段首筋の辺りまで伸ばしてあるものを、今回は頭のてっぺん付近に一ヶ所だけ結び目を作り上げている。 いわゆるポニーテール。 それに加えて、何度も見てきた誰もが認めそうな東洋美人の容姿。 何故か高校生の中にヤタが混じっていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加