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「……お前、酔っ払いの話なんかを真剣に聞いてたのか?ハハハッ、変わったヤツ!」
そりゃ、自分でもそれは思わなくもなかったけどさ。こうして初対面、しかも言ってしまえば不審者に笑いながらそう言われると、本気(ガチ)でムカつく。
「ど~も!!スミマセンね、変わってて!」
「っと、悪い。バカにしてた訳じゃないからな?そう怒るなよ」
「……別に、怒ってなんかないです!」
なんなんだ、この人。胸クソ悪くてさっさと帰りたい。そう思って、さっさと消えることにする……はずだった。
「ちょっと、何ですか?」
さて行動に移そう、と踵を返したら肩を掴まれた。相手が年上っぽいから一応は敬語を使ってはいるが、いい加減キレそうだ。
「待ってくれよ。勝手に邪魔して、しかも怒らせちまったみたいだしさ。ワビも兼ねてメシでも食いに行かないか?」
「はぁ?」
何を言ってんだ、この人は。っていうか、これは新手のアレか?詐欺の一種?
「そんなに警戒しなくたって、騙したりしないからな?天地神明ならぬ俺自身に誓って、俺のオゴリで普通にメシを食いに行くだけだって」
「……そこまでされる義理がないですよ」
「だから、お前の機嫌を損ねたワビだって。酔っ払いの話を聞くくらいヒマしてたんだろ?それなら、食い物付きで俺の話を聞く方が有意義じゃないか?」
それは……確かに。こんな冬の寒空の下で、ただ話を聞くよりは良いかもしれない。そよぐ冬風に、思わず手を擦り合わせる。そこで、自分の体が思いの外に冷えていることに気がついた。
「ここにいるのも寒いし、どっかの店に入ろうぜ?心配しなくてもちゃんとオゴルからさ」
初対面の人だ。しかも、いきなり自分を笑ってくる、失礼な人だ。それなのに、思わず頷いてしまった。了承してしまった。そんな無用心な自分に驚くしかないけど、それは相手のオゴリで自分が金を出さなくて良いのに加えて、寒さで冷えた体を温めたかったからだと思うことにした。
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