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桐島秀(きりしましゅう)はタバコをふかしながら画面を食い入るように見つめていた。秀は極度の猫背で、首から頭を前に突き出し、ブツブツと独り言を言いながら時折舌打ちをするのが仕事中の癖だった。切れ長の両目が細かく上下左右に躍動する姿は、さながら現代の狩人を思わせる。
暗い部屋の中にはディスプレイの明かりのみが煌々と灯り、背面の壁へと秀の姿を写し取っていた。
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画面を素早く上下にスクロールさせる。フケだらけの髪を左手で乱暴にかき上げながら右手でマウスをクリックする。
「んー。うん、よし……ん、おっけー。完了っと」
キツネ目が一転、パッと見開かれると、続けて大きく伸びをしてデスクを離れた。先ほどまでの呪術師のような独り言が、今度は童謡のごとく鼻唄へと変わる。冷蔵庫から缶ビールを取り出して一口飲むと、新しいタバコに火を付け、猫背に詰めこんでいた息を煙とともに中空に吐き出した。
秀はサーバーの構築やメンテナンスの仕事を企業から下請けすることを生業としていたが、他にも時折、ウェブサイトの作成やセキュリティ対策の実装なども手広くかつ慎ましく行っていた。商売の規模は小さいが秀はこの仕事を気に入っていた。自分のペースで、やれる範囲の仕事を、自分で管理し自分で選び、食うに困らない程度だけ行う。実際、秀の腕は一般的にはかなり優秀な部類に入るため、仕事の依頼は絶えなかった。しかし秀にとってはそういう些事よりももっと大事なことがあった。それは孤独と自由の保守。独りで仕事することでわずらわしい人間関係が無く、例えひきこもろうと、日がな一日パチンコしてようと、3日徹夜した後に2日寝続けようと、誰にも文句を言われないことが何よりありがたいのだった。
床に散乱したコンビニ弁当の抜け殻を蹴飛ばし、くわえタバコのままサンダルをひっかけドアを開ける。
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