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「んー、じゃあモーニングティーを頼もうかな。勿論アレで」
「かしこまりました」
陶器の澄んだ音を響かせつつ、紅茶の澄んだ紅色がティーカップに注がれる。そして、紅茶特有の仄かな香りが部屋いっぱいに広がる。
無表情かつ無感情で仕え、雑務は完全無欠の今は執事の律識に悪戯心が湧いてくる。
こいつを戸惑わせたい…
「なあ、律識」
「なんでしょうかご主人様(マスター)」
「その紅茶、直訳の意味でリップサービスしてくれないか?」
一瞬の沈黙。
「は?」
「だ・か・ら、口移しで飲ませろってこと!」
俺の唇を指して挑発してみる。
「なんでもしてくれるんだろ?できないってことはないよな?」
あ、少し頬が赤くなってる。可愛いな…ついついニヤニヤしちまう。
「……っ。かしこまりました。それでは、失礼します」
紅茶を熱過ぎず、冷め過ぎないようにふーふーして口に含み、
手を添えて顔を近付け、
唇と唇を合わせて零さないよう紅茶を俺の口内へと流し込んだ。
でも、やっぱり数滴零れたが。
零れた紅茶の雫を舐めとるのもいじらしい。
離れた時には無感情を装いながらも頬は上気し、瞳は潤んでいてかなり艶っぽい。
俺は笑みを深めていってやった。
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