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その場しのぎであったけど何とか事なきをえた弥琴は晩ご飯の支度を始め、希美都はお風呂。
希紗都は暇を持て余してテレビを眺めていた……のも束の間。
サッと台所にやってくるやいなや、弥琴を背中から包むように抱きしめた。
弥「うわっ、希紗都危ないよ…」
紗「ごめんね。ねぇ、弥琴?」
と、やり取りはするものの、離れろとは言わない弥琴。
すっかり先ほどの事は終わったものだと思い込み、引っ付くことを簡単に許してしまっている。
だが、これは希紗都にとって好都合のなにものでもなかった。
弥「ん? なに? 手伝いなら大丈夫だよ」
紗「違うよ。てか、家事なら弥琴に任せた方が早く終わるって分かってるもん」
弥「なら、どうしたの?」
紗「ねぇ、弥琴…………キスして――…」
ザ――ガタンッ!……
弥「え、何……き聞こえ無かったんだけど…」
それは嘘だと希紗都は分かっていた。
何故なら、その台詞は弥琴の耳元で、確実に聞こえている大きさで、ゆっくりと言ったのだから……。
その証拠に弥琴の手元の包丁が震えて上手く食材が切れていないうえに、弥琴の頬や耳が真っ赤に熟れている。
そう。弥琴は動揺している。
揺れているのだ。
だからこそ、希紗都はここぞとばかりに話を続ける。
紗「わたし、まだしたことないんだ…キス。初キスは心から好きな人と…って決めてるの。その気持ち、分かるでしょ?」
弥「ま、まぁ……うん」
紗「だから、さ……弥琴。わたしとキスしよ?」
弥「な、なに言ってるのか……意味が分からないんだけど」
狼狽する弥琴に、希紗都はさらに追い討ちをかける。
紗「分からないハズ、無いでしょ。言ったよね……初キスは心から好きな人と、って…」
さらに抱きしめる力を強め、口を弥琴の頬あたりに付ける様にして拘束する。
紗「わたし、弥琴とキスしたい…」
弥「あ、や……え、でも…僕ら、姉弟…で……え、あ…家族の挨拶でのって意味での…」
紗「違う。家族以上の…男と女の意味で……」
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