case-2 峠。

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「戻ってくる前に真言がプリント出来たら帰っても良いと思う?」 俺の問いかけに真言は、 「戻ってくる前に出来たら帰っていいんじゃね?(笑)」 ようするに、出来るわけないだろと(笑) 「うーむ…」 残りの問題は後わずか。 5教科のうち最後に残してた数学だ。 ──しばらくすると先生が戻って来た。 「ほれ。先生のおごりだ」 そう言って先生は俺達にサイダーの缶ジュースをくれた。 「みんなには内緒だぞ」 爽やかに笑いながらそう言われると… 「…女子の気持ちが少しわかった気がする」 「ははっ何だそれ?うん、さっきより進んでるな」 真言の手元を見て先生が言う。 「村雲は…何で毎回赤点とるんだ?今解いてる問題結構難しい方なのにスラスラ解いてるし」 先生は自分のサイダーのプルタブを開ける。 プシュっと心地よい音がする。 俺も開けた。 「赤点とる生徒にそれ聞いてどーすんの先生(笑)これは昨日深言に教えられた問題だからできてるだけー」 真言も手を止めてジュースを開けた。 「そうなのか?でもちゃんと理解してるんだよな?なんか時々わざと赤点とってるんじゃないかと思う時があって」 「気のせいでしょ。誰も好きで赤点なんかとらないって(笑)」 「ねぇイオ先生!先生って彼女いんの?」 「なんだ急に(笑)いないよ」 俺は真言と先生の会話に割り込む。 実は真言は頭は悪くない。 真言が赤点を取るのは、きっと俺の為なんだ・・・ 無駄に頭が良いから学校に駆り出される俺のためだと思ってるんだけど。 その理由はまたおいおい。 「そーなの?モテそうなのに」 「いや・・・そんな事ないぞ」 それから話を逸らせて、色んな世間話をしていたけど先生が言いにくそうに言葉を紡ぎ出した。 「村雲…その…なんだ。ちょっと小耳に挟んだんだけど…」 「なんですか?悪い噂?」 先生がチラッと俺を見る。 あ、俺は邪魔かな? 「俺が居たら話しにくいなら廊下に出るけど」 「出る必要ないって。先生続けて?」 「ああ…悪いな。その、村雲兄弟は霊感がある…とか」 「・・・・」 いや、まぁ隠してるわけじゃないけどね? 噂かー。 「はは・・・何聞いてるんだろ俺。悪いな2人とも」 ばつが悪そうに笑う先生。
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