それはもう突然に

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体が硬直してしまった。 女の子が、長いまつ毛を動かして目を開いた。 虚ろな目をして、目の前の壁を見ている。 「えっと…」 揺すろうと出した手は行き場をなくし、空中で止まったまま、僕はとりあえず声をかけてみた。 「ぅあ!」 「え!」 女の子は突然よくわからない声をあげて目をカッと開いた。 そしてガバッと起き上がったと思うと、そのまま横から僕に飛びかかってきた。 「飛びかかった」?いや、違う。 僕の首に腕を回し、「抱きついてきた」。 そのあまりの早さに僕は何も出来ず、行き場をなくした手の如く静止してしまった。 あれ?なんだろう。 左腕に柔らかい感触。
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