一人目~瀧本一樹~

5/6
前へ
/9ページ
次へ
―カァ~カァ~ …カラスが鳴いてる、もう6時過ぎだもんな… 教室に残りプリントを終わらせていた一樹の手が止まる。 最初は教室で自分を馬鹿にしていたクラスメートと、竹田への怒りで、プリントを終わらせてやると思っていたが、時間が経てば経つほど自分の惨めさを感じる。 ―あいつらに言われた通りだな…。勉強できない、友達いない、俺には何も無い。落ちた方が良いのかもしれない。 そんなことを考えると手が止まってしまう。 それから7時になるまで、書いては止まって考えるの繰り返しだった。 そして竹田が職員室から上がってきた。 「おぅ、ちゃんと勉強してるな。偉いじゃないか。今日は帰って良いぞ。これからは7時30分まで居残りだからな。」 「先生…、俺…」 ―学校辞めるよ… そう言おうとしたが口から出た言葉は違った。 「3年に上がるよ。」 竹田と目が合う。 「その意気だ。お前ならやれる。頑張れよ。」 竹田は笑顔で職員室に戻って行った。 ―そうだ。上がるんだ。3年になって卒業してやる。 ただ、3年になりたい。その思いだけが心の中に残っている。そして一樹は家に帰って行った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加