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―カァ~カァ~
…カラスが鳴いてる、もう6時過ぎだもんな…
教室に残りプリントを終わらせていた一樹の手が止まる。
最初は教室で自分を馬鹿にしていたクラスメートと、竹田への怒りで、プリントを終わらせてやると思っていたが、時間が経てば経つほど自分の惨めさを感じる。
―あいつらに言われた通りだな…。勉強できない、友達いない、俺には何も無い。落ちた方が良いのかもしれない。
そんなことを考えると手が止まってしまう。
それから7時になるまで、書いては止まって考えるの繰り返しだった。
そして竹田が職員室から上がってきた。
「おぅ、ちゃんと勉強してるな。偉いじゃないか。今日は帰って良いぞ。これからは7時30分まで居残りだからな。」
「先生…、俺…」
―学校辞めるよ…
そう言おうとしたが口から出た言葉は違った。
「3年に上がるよ。」
竹田と目が合う。
「その意気だ。お前ならやれる。頑張れよ。」
竹田は笑顔で職員室に戻って行った。
―そうだ。上がるんだ。3年になって卒業してやる。
ただ、3年になりたい。その思いだけが心の中に残っている。そして一樹は家に帰って行った。
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