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一樹の家は、学校から自転車で40分程かかり、家は二階建ての借家で裏には大きな池が見える。
「ただいま~。」
一樹は横にスライドして開く玄関を開けて、靴を脱いで、すぐにリビングへの扉を開けて入った。
「お帰り。遅かったねぇ、一樹。」
リビング入って左側に部屋があり、その部屋から祖母である瀧本清子(たきもと きよこ)が出てきていた。
「ばあちゃん、俺…追試っぽい…。」
一樹はすまなそうに言った。
一樹は昔からよく、清子に可愛がられていた。だから、一樹が家族の中で一番、祖母の清子を信頼してるし、いろいろな想いがある。清子もまた、一樹のことを信頼していた。
それを知ってるから、学校をサボったり、喧嘩をしたりしても、清子だけは悲しませたくないから、勉強もした。出来る手伝いなら手伝ったりもした。だから、追試になったことをあまり言いたくないという気持ちと、伝えなければという気持ちの狭間にいたから、一樹は怖かった。
「……そうかい…。追試になったのかい。……。」
「ゴメン…。俺…っ。」
急に身体が熱くなった。胸が苦しくなる。
―ばあちゃんに迷惑をかけてしまう!心配をかけてしまう!何やってんだ俺は!?
「…頑張るんだよ。一樹はやれる子なんだから。きっと大丈夫。おばあちゃん応援してるよ。」
清子は笑っていた。
「ばあちゃん、俺…。」
「ばあちゃんは、一樹を信じとるよ。きっとできるから。そうだ、合格して3年生なれたら、パーティーをせんとねぇ。いや…、追試前にカツ丼でも食べようか?」
清子はそう言って、また笑顔になり、部屋に戻りだした。
「ばあちゃん!」
「んっ?」
「合格したら、寿司食べたい。」
一樹も笑顔で言う。
「大トロをたくさん食べようかねえ。」
まるで自分が食べたいと言ってるような清子を見て、また笑ってしまう。
一樹は2階に上がる階段を上がりながら、思った。
―絶対に合格しないとな。よし、不良を…辞めれたら―いや、少しだけ抑えれば良いか。ついでに、クラスの奴らを見返してアゲインしようかな。
一樹は祖母との約束、そしてアゲインするために自分の部屋の扉を開けた―
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