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翌朝、2人はやっとの思いでチョコを完成させた。
「ここまで手こずるとわ・・・」
シンディは出てもいない額の汗を腕で拭う。
最終的にラッピングはマリアに任せたが、達成感を覚えて満面の笑みを浮かべている。
時刻は午前4時。
仮眠を取るぐらいの時間はあるので2人はそのままリビングのソファにダイブした。
*
「で・・・お前は何で寝不足なんだ?」
「妹のチョコ作るの手伝ってたんだよ・・・」
眠たげに目をこすりながら登校しているアレン。その隣にはいつものように呆れ顔のランスロット。
「出来たのか?」
「まぁ・・・ね」
鼻で笑うランスロットにアレンは背中を叩いた。
「ご苦労様なことだな」
「・・・」
学校に着くとランスロットの顔が強ばった。
「あらら、相変わらずモテるね」
下駄箱から溢れ雪崩出る華々しいラッピングを眺めてアレンは苦笑した。
「下駄箱に食い物詰めるなんて不衛生だろ・・・」
そういうランスロットの声は不機嫌そのもの。
しかし律儀に紙袋にその贈り物を入れていく。
「どうしてそんな強面でモテるんだ?」
「・・・しらねぇ」
「あっそ」
アレンは2学年の下駄箱へ向かう。
ランスロットは1つ上の3年生。
「あ・・・」
背中の方から声が聞こえて振り返るとシンディがタジタジと自分を見て後ずさりする姿が見えた。
「おはようございます、シンディさん」
「あ・・・はい、おはようございます」
「そうだ、これ・・・昨日妹と作ったんですけどどうですか?」
アレンは鞄の中から小さな紙袋を差し出した。
「こういうのって確か逆チョコ・・・と言うんでしたよね」
「マリアさんにも渡してあげてください」とシンディの手に紙袋を持たせる。
「ありがとう・・・ございますっ」
「じゃあ」
アレンはシンディに手を振ると、先行くランスロットの背中を追って走っていってしまった。
「・・・」
呆然と立ち尽くすシンディ。
その後ろからマリアが現れた。
「なぜ・・・渡さなかったのかしら?シンディ」
「え!?あの・・・ちょっと」
マリアはシンディの肩を掴んで前後に揺する。
しばらくしてからため息を吐く。
マリアにとってシンディへのため息はもはや恒例行事と化しているようだ。
「分かりましたわ・・・わたくしが手を打ちます」
「へ?」
「期待していてくださいな!」
目を輝かせてマリアは廊下を早歩きで出って行く。
決して走ったりはしないようだ・・
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