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ブルブルとポケットの中の携帯が震えた。
携帯から伝わる振動に、こんな時間に誰からだろうと相手の予測もつかないままに画面を確認すると
ディスプレイに表示された名前に、右手が微かにプルプルと震えた。
―ピッ
「……もしもし」
「あ?…あれっ?」
「……」
動揺に震えた右手が、今度はジワジワと湧き上がる怒りに震える。
こいつ、明らかに誰かと間違って俺に電話をかけてる。
だって、今更俺に連絡する理由なんかあるわけないんだから。
つか、今回はずいぶん長い間携帯を変えてなかったんだな。
携帯を変えるたびに電話番号が変わるのに、ずいぶん前に登録したまま使用されることのない名前が表示されてることに、なんだか意外で驚いた。
次に仁が携帯を変える時には、俺に変更の連絡はこないだろうと思ってたから。
コロコロ番号を変えるお前だから、何の連絡もこない事に、もうすでにお前の携帯の中から俺は消されてしまったものだと思ってたよ。
意外。
まだ、繋がっていたんだな。
「…仁だろ?お前誰と間違えてかけてんだよ」
「カメ…?あれ?あの…ほんとにカメ?」
「だから、お前かける相手間違えてんだよバカ」
身体の内側がフルフルと震える。
内臓が震えてる感覚。
吐き気を覚えて、目眩がしそう。
「あー…カメ、うん、ごめん」
「…なんだよそれ」
「まぁ、間違えたっちゃ間違えたかもけど、なんか久しぶり?」
「どーゆう日本語だよそれ…」
「っ久しぶりって言ってんじゃん!なんかカメ冷てぇーし!」
まだ微かに震えの止まらない右手の先が、ジワジワと冷たくなる。
つか、冷たいのはお前の方じゃねぇの?
今までは、いつだってお前の方から連絡くれてたじゃん。
なのに、忙しいのかなんなのか、離れてからちっとも連絡くれなくなったじゃんか。
俺だって暇じゃねぇし、むしろ忙しいし。
こんな間違い電話で久しぶりとか、ふざけんじゃねーっつーのバカ。
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