204人が本棚に入れています
本棚に追加
離れた距離は確実に二人の関係性を冷ましていったんだよ。
なにか強烈なキッカケがあったわけでもない。
ケンカ別れしたわけでもない。
ただ単純に、目に映らなくなったモノへの興味が薄れてしまっただけなんだ。
それは、誰が悪いわけでもない。
俺は悪くないし、仁が悪いわけでもない。
毎日違う景色を見て過ごしていれば、仕方のないことなんだ。
だけど、理論的には頭ではわかっているつもりなのに、理不尽だとわかっていても、仁を責めたくなってしまうんだ。
お前が離れていったから。
お前が連絡をくれないから。
そう言って責めたくなる。
だけど。
俺から連絡をして。
俺から近づいていけば。
それだけで、すべてがうまくいくって、わかっているのに。
俺には、それができないんだよ。
どうしても、できない。
だから、仁からアクションを起こしてくれることを心の片隅で常に願っているのに
こうやって唐突にこられると、どうしていいかわからなくなるんだよ。
ほんと俺って理不尽。
「…どうせ俺に用はないんだろ?切るからな」
「ちょ、待って待って!あるから!用あるから!」
「なんだよ…」
「カメ、誕生日おめでとう」
「…―っ?!」
「あれ?おめでとう、ございま…した?」
なに、そのカウンター攻撃。
予測不可能もいいとこだろ。
そんな攻撃に耐えられるほどの防御力なんて、お前に対して備えてるわけないじゃん。
もう、崩れ落ちてリングに跪きそうなんですけど。
「お前…さっき間違って俺にかけたって言ったよな?」
「ん?ああ、かけようか迷っててやっぱやめようって思ったんだけど、なんか間違って発信ボタン押しちゃったから、間違いっちゃ間違いだろ?」
「…意味わかんねー」
「まあいいじゃん、かけてよかったし」
「なにそれ…、つうかなんで迷うんだよ!黙って連絡してこいよ!」
「…黙りながら連絡はできなくねぇ?」
「んなこたどーでもいんだよバカ!そこつっこむとこじゃねーんだよ!」
なんだよそれ、なんだよそれ。
つか、なんで今まで迷ってたんだよ。
そんなん、お前のキャラじゃねぇだろ。
ほんとバカ。
いい加減わかれよ。
俺は今まで、その何倍迷ってきたんだと思ってんだよ?
最初のコメントを投稿しよう!