『私は湊峠君が好きである』

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あーあ。 また失敗してしまったわ。 今日も私は地面を転がる。 初恋の相手に包丁を向けるという行為がおかしいことなのは自覚しているわ。 でも手に入れたいじゃない? どうせ好きなら愛して欲しい。 湊峠君を独り占めしたい。 私だけを愛して欲しい。 殺してでも振り向いて欲しい。 死ななくったって殺したい。 それが私の考え。 まぁいつも返り討ちだけど。 その日は珍しく湊峠君が逃げずにその場で留まっていた。 「しっかしお前も物好きだな。変わり趣味か?どーやったら俺に惚れるよ。なぁ天宮?」 「うーん、私もちょっと惚れそうでしたけどね」 「え、やめろよお前も俺を刺しに来るとか死ぬぞ俺、いや死なないんだってば」 「先輩、その定義はおかしい……」 ─────っていうか、 「誰よあなた!!」 「あ、私は天宮沙紀です」 「違うわよ!!あなたは湊峠君の何!?彼女!?」 「うーん……友達です。というか緑皇院さんが湊峠さんを襲ってたときはだいたいいたんですけど……見えてませんでした?」 「私は湊峠君以外は興味が無いのよ。というか本当に友達なの?嘘だったら殺すわよ」 「本当ですよ、まだ死にたくないから殺さないでください」 うーん、ここで信じていいのかしら。嘘をついてるかついてないかなんて私には一目でお見通しなのだけど、湊峠君のことだからここはさすがに慎重にならないといけないわよねー…… 「さてと、取り敢えず包丁はお預けだぜ。一日に二回も三回も来られたら敵わんからな。放課後また来い。返してやるから」 地面に座り込んでいた私の手からスルリと包丁が取られてしまう。 まぁ実はスカートの中に小型ながらナイフを持っているのだけど、これは所謂チャンスなのでは?今の湊峠君ならば油断しているし、放課後に油断している湊峠君を刺すことだって可能、それは即ち私が湊峠君を────!! 「湊峠さん、この人スカートの中にまだナイフ持ってますよ、小型だけど」 何故バレた。 忌々しきかな天宮沙紀。 この子は彼氏彼女とか関係無く私の邪魔な気がする。 気がする。
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