『私は湊峠君が好きである』

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湊峠君から思わぬサプライス(二重の意味で)を受けた私は午後の授業に集中出来ず、窓の外ばかりを見ていた。 8時限目が終わり、いざ荷物をさっさと纏めて屋上に行こうとしていた時のことだった。 『ピンポンパンポーン。3年1組の緑皇院さん。3年1組の緑皇院さん。すぐに校長室へ来てください。繰り返します、3年1組の緑皇院さん───』 校長室? 珍しいわね、お父さんが私を放送で直接に呼ぶなんて。 無視してもいいのだけれど、放送で呼んだということは何か大切な用があるのかしら。 私は仕方無くだけど、校長室を優先することにした。 ガラガラと、立て付けの悪い扉を開き、校長室へと入る。 「アリシアよ。で、何かあったのお父さ…………」 私はそこで喋るのをやめて、すぐにそこから離れようとした。 が、すでに黒服の、良く言えばガタイのいいボディーガードのような、悪く言えばマフィアのような二人の男が退路を塞ぎ、止おせんぼのような形で立っていた。 「おやおや、いきなり逃げるなんて酷いなぁアリシアさん」 校長室にある多きな机の横に立っている男、長身でメガネをかけていて、クールな目付きをしたその男は、私が最も会いたくない男、私の許嫁であった。 実際はほぼ無理矢理な形で許嫁にされたのだが。
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