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「……お父さん、これは一体全体どういうことなのかしら」
お父さんを力一杯睨む。しかしお父さんはなぜ睨まれてるのか分からないといった風で、私の視線に怯えてさえいるようだった。
「私が近くに来たものですから、お義父様にお呼びして貰ったのですよ。私の妻となる人を少しでも多く長く見ていたいとは思いませんか?」
「私は一生でもいいから貴方の顔を見たくはなかったのだけど。あと妻って私のことかしら?やめてください気味が悪いから」
私は目一杯の嫌みを込めて言い放つ。しかし涼しげな表情で話は先に進められる。
「実は今日来たのはちゃんとした理由があるんですよ」
「理由?何よ、ただ近くに来ただけじゃないっていうの?」
「ええ、実のところ、今日は迎えに来たのですよ」
意味が分からない。
迎えに来た?私を?何に?
「というのも、私は今日で海外に行ってしまうのですよ。仕事の都合でね、しかしあなたをここに置いていくのは余りにも勿体が無い。だから、迎えに来たのですよ」
「はぁ?貴方は何を言ってるの?行くわけが無いでしょう。むしろ勝手に行ってさっさと縁を切りたいのだけど」
許嫁はクツクツと笑う。
正直、かなり気味が悪い。
一頻り笑ったあと、許嫁は口を開いた。
「いや失敬、あまりにも笑えてしまいました。どうやら貴方は何も知らないんですね?」
「…………何を、よ」
「この階の屋上にいる生徒、あなたの知り合いらしいですね?」
「なっ……!!」
……んで、知っているのよ。
あなたが。なぜ……!!
「今、この屋上にいる生徒にとある殺人の容疑がかかっています。もちろん根も歯もありませんよ?ただのデマです」
しかし、と許嫁は続ける。
「私はこの話に根も歯も生やすことが出来てしまいます。さてアリシアさん、この容疑を晴らすにはどうすればいいか、貴方なら簡単に分かりますよね?」
30分だけ時間を上げます、皆にお別れの挨拶をして来て上げてください。ただし、屋上にいる生徒、確か……南峠?だか何だかとは喋らないでくださいよ。では、私は裏門でお待ちしています───
それだけ言うと、私の許嫁は校長室から出ていった。
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