『私は湊峠君が好きである』

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「お父さん。もう一度聞くわ、どういうことかしら」 今度は出来るだけ睨まずに、しかし確かな怒りを持ってお父さんに問い掛けた。 「いやごめんよアリシア、どうもこうも私も今初めて聞いたんだ。何が何だかさっぱり分からん」 頼りにならない父親だ、さすがに呆れてしまう。 しかししょうがないのだろう。 どうやら私の学生と、恐らくは最初で最後の恋は終わってしまった。屋上で寝ている湊峠君が私の包丁を持っている為、自害することだって出来ない。 私の未来は、急速に絶望へと変わっていった。 「1つ、お願いがあるの」 泣きそうな声を必死で隠し、平静を保ちながら私はお父さんに頼み事をする。 「湊峠君ね、多分に私がいなくても無茶をすると思うの。だからね?その時は助けてあげてね?もし助けてくれなかったら私、泣いちゃうかもよ……?」 返答は聞かなかった。 背後で何か聞こえた気がしたが、私はあえて無視して校長室から飛び出し、扉を閉めた。
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