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る程度、とりあえず職員室に向かい担任の先生に報告をして、一人一人への伝言を聞いて貰った。
先生は黙って聞いてくれていた。
そして、私が職員室から出たときに、先生は小走りでどこかへ向かって行った。いや本当にどこに行ったんだろう……
纏めていた荷物を持ち、裏門へと向かう。すると一台の黒い車が停められていた。
「来ましたか、利口な判断です」
「もちろんよ、私は湊峠君を愛しているもの」
ピクリ、と許嫁の眉が動く。
「ふぅ、あなたにも困ったものです。あなたは私の妻ですよ?他の男の話をするのは無粋じゃあありませんか?」
「残念だけど、私は海外に行ってもあなたを夫として見ないし、男としても見ないつもりよ」
許嫁はまたクツクツと笑う。
本当に気味が悪い。
「フフフフフ……いやぁ、貴方は本当に面白いよ。あっちに着いたら、思う存分に貴方の心をへし折ってあげますよ……」
さぁ、お乗りください。
そう言わんばかりに許嫁は車のドアを開ける。私は大した抵抗もせずに、車の中へと入る。
しかしこの学校でも色々なことがあった。今更ながら感傷に更けっている私がいた。
色々と思い出しているうちに、湊峠君の顔が思い浮かんだ。
湊峠君とも色々あった。
刺して追って巴投げ。
刺して追って巴投げ。
刺して追って巴投げ。
刺して追って巴投げ。
そういえば、当然と言えば当然だけど湊峠君の方から私のところへ来る、ということは一度だって無かった。
結局、最後の最後まで無かった訳だけど。そう思うと少し悲しかった。一方的に好意を寄せて、サヨナラも言えずに去っていく。迷惑以外の何でも無い。
そう思うとやはり、胸が痛い。
そう思うと、少しだけ、泣けてくる。というか、泣いてしまった。
声には出さず、表情も変えずに、ポロポロと泣いていた……
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