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「いやな?屋上にいきなり先公が現れてな。「緑皇院が連れてかれるぞ。いいのか?」って、いや俺は別に良かったんだが天宮が俺の話を聞かずに屋上から放り投げやがったんだよ。あと彼氏ってのは言葉の綾だから気にすんな」
まぁ、そうでしょうね。
あれから半日、私は今、天宮沙紀の家にいた。湊峠君と一緒に。
さすがに今家に帰ると怖いので、お父さんに連絡だけして。
「でも大事にならなくて良かったですよね。あ、ココアです」
「あら、ありがとう」
天宮沙紀が持ってきたココアを飲みながら、これからのことを考えていた。
そう、大事にはならなかったのである。
あの塀はもちろん許嫁が弁償、殴られた顔は事故で打ったということに、してもらった。
「しっかしあの時のお前はイキイキとしてたな。俺から包丁を回収した瞬間まさか許嫁を脅しにかかるとは思わなかったわ」
「忘れてちょうだい」
そういうことである。
あの後に湊峠君が持っていた包丁を使って目一杯に「お願い」させてもらいました。
報復が怖いけど、そこはお父さんに頑張ってもらいましょう。
「緑皇院さん、もうそろそろ電気を消していいですか?あ、あと湊峠さんはちゃんと別室を用意してありますんで」
「ええ、構わないわ。ところで天宮沙紀」
「はい?何でしょう」
「アリシアでいいわ」
おやすみ、と言ったあと敷いていた布団に入り、思った以上にぐっすりと眠ってしまった。
本当は、もっとお話をしたかったのだけど。
結局、今回だって湊峠君が来てくれたのは私のためでは無かったけれど。それでも私は今回のことを一生忘れないと思う。
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