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「『冷酷な天使』、あなたに依頼を受けてもらいたいのですが」
3日前のことだ。
ある男が、私の事務所へ訪れた。
男の名は榊原大輔。
表では有名な薬品会社の社長だ。
あくまで『表』の話だが。
「しかし驚きましたね、まさか冷酷な天使が子供だったとは」
「あまり人を見た目で判断しない方がいい。あと、私の気分を害すようならば依頼は引き受けない」
「失礼、本題へ入りましょう」
榊原は胸元から数枚の写真を取り出し私の前へと並べる。
これは、日本の学生?
「あのかの有名な薬品会社の社長が持ってきた依頼はどんなものかと思えば、まさか私に学生殺しでもしろと言うのか?」
「ええ、その通りです。『あのかの有名な冷酷な天使』が、まさか一般人は殺したくないとでも?」
「……少し気になっただけだ。依頼とあらばどんな相手でも遂行する。それが冷酷な天使だ」
嫌味な男だ。
こういう人間は好かない。
というより、苦手だ。
「それは安心しました。ではこの男についてお話したいのですが、よろしいでしょうか?」
「構わない、話してくれ」
「では、この男の名前から話しましょう。この男の名前は──…」
『湊峠』
それが今回の標的だった。
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