2人が本棚に入れています
本棚に追加
Kは才能に溢れた絵かきだった。
彼の1枚の絵を見た者は、悲しみを感じると言い。
ある者は、夏に降る雨だと言い。
またある者は、ダンスをする男女だと言った。
Kは仕事部屋の中で、何時間も真っ白なキャンバスの前に座っている。
唸りながら、アイディアが湧き出るのを待っていたのだ。
以前なら、こんこんと湧き出る清水のように、書きたい図柄を思うように描くことが出来た。
しかし、周囲の期待や、それによるプレッシャーが、彼の才能を潰してしまっていた。
Kは悲しそうに呟く。
「なんにも思い付かない……
私の才能は涸れてしまったのか」
彼は、タバコに火をつけ
1本、2本と消費し……
苛立ちから、思わずキャンバスに、ちびたタバコを押し付ける。
なにも描かれていないキャンバスの真ん中に、汚らしい茶色の染みだけが残った。
最初のコメントを投稿しよう!