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あの日。
光司が同じクラスの佳子と浮気したと知った日、ショックで一人教室で泣いていた。
浮気は初めてのことではなかったけど、さすがに身近な人とってなると、ショックも半端ない。
何時間経っても動く事が出来ずに、いつの間にか涙も枯れていた。
そろそろ、帰らなくてはいけないと思った矢先、教室に誰かが入ってきたので驚き、ドアの方を振り向くとそこには、川村くんが立っていた。
思わず大げさに、窓の方に向き直り、彼の視界に顔が見えないようにし、泣いているのを気がつかれないように息も殺した。
ゆっくりと、私に近づいてくる足音。
その足音は私の隣の席で止まり、椅子を引く音がした。
「忘れ物、取りにきた」
ここ何ヶ月か席が隣だったけど、話しかけられたのは今日が初めてかもしれない。
「そ、そうなんだ。川村くんはサッカー部だっけ?練習終わったの?」
「ああ」
そっけない返事。
私には興味ないって感じ。
だから大丈夫。泣いていることは気がつかれてないはず。
「あのさ」
「な、何?」
そのまま居なくなると思っていたのに、声をかけられたから思わず川村くんの方を向いてしまった。
きっと今の私は目と鼻が真っ赤になっていてに違いない。
「そんなに辛いなら別れれば?あいつの浮気は病気みたいなもんだからこの先も続くと思うよ」
「病気って」
「病気っていうならあんたもか。夢見るお姫様病。毎日飽きずに恋愛の話ばっか。しかも光司は理想の王子様?かっこ良くて、勉強もできて、スポーツもできる。将来有望で、自慢の彼氏だっけ?あいつはただのスケベな男だろ。夢見るのは小学校高学年までにしろよな。ほんとウケるわ」
「な!」
まさか、今までの会話が聞かれていたとは。っていうか、初めてまともにしゃべったと思ったら、憎まれ口を叩かれるとは思わなかった。
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