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顔をあげると、目の前に見えたのは川村くんの顔。
「俺が関係ないって?」
そういって川村くんは遠慮なく私にもっと近づいてくる。
この時、押しのけてその場から逃げることも可能だったのに、私は何故か迫ってくる川村くんに身を委ねるように目を閉じてしまったんだ。
何故だか、分からない。
ただ、近距離で見つめあった彼の瞳があまりにも透き通っていて、私を捕らえて逃げることができなかったのかもしれない。
近づいてくる川村くんの気配を感じながら、ちゃんと見ると川村くんって整った顔立ちしてるんだな、なんて呑気なことを考えていた次の瞬間、唇にあたたかな感触。
少し遠慮がちに触れた唇。
ドキン
そして、静かだった教室に私の鼓動が鳴り響きだす。
彼が離れ、また近距離で見つめ合う。
やっぱり、彼に見つめられると目をそらす事も逃げ出すことも出来ない。
「これでも関係ない?」
「あ、あの」
「これでもうあんたも光司のこと言えないね。……どーでもいいんだけど、今回こそ別れた方がいいと思うよ。じゃあね」
何事もなかったように、教室から立ち去って行く君をただただ見つめていた。
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